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作曲家/ピアニスト 武藤健城(イーガル)の公演情報などなど日々の白昼夢。


by takekiygalmuto

11月、12月の読書

11月、12月は何とまァ、ヒドい読書をしました。
こういう乱読はしちゃいけないとは分かっているんですが、
11月後半から約1か月、何故だか意味もなく
日本の量産型作家のミステリーを読み狂うという、
真におかしなことし続けていたので、大体1日1冊、もしくは2冊。
あーっという間に読んでしまうんですな。
赤川次郎やら西村京太郎やら。

そして分かったことが一つ。
西村京太郎は(特に初期作品に関して)大変素晴らしい作家だということです。
ミステリーという範疇だけでは語れない、切実な人間模様を書ける人だと知ったことです。
赤川次郎も初期作品は意外と面白かった。
他の量産型ミステリー作家については、良く分からなかったです。

ということで、そのようなミステリーは割愛しつつ。


11月。

『居酒屋』エミール・ゾラ

最高の昼ドラでした。
これはホントに素晴らしい。何で今まで、ゾラを馬鹿にしてきたのか。
ゾラが大衆というものを愚かであるがゆえに愛おしいと思っている気持ちが
伝わってくる。これはもう、『ナナ』も読まなきゃ。


「トマス・アクィナス『神学大全』」稲垣良典

中世の神学者アクィナスの神学大全の解説ではあるんだけど、
この解説に全く納得がいかなかったし、もしこの解説が正しいのであれば、
僕にとってアクィナスは何ら必要がないと思った。


『突囲表演』残雪

現代中国の偉大な作家、残雪。
超技巧的な1940年代のフランスヌーヴォーロマンを彷彿とさせる作品で、
一人の人間のことを様々な視点から語る。
その語られる女の年齢すら、人々の見解で大きく差があったり、
小説の中で次々に現れる矛盾。それをそのまま矛盾として並べていくというのは、
作家として並大抵の技量ではない。
素晴らしすぎます。


『黒いピエロ』ロジェ・グルニエ

グルニエの中編。気休め程度に読んだのですが、
あまりぐっとくる部分もなく、無難に纏まった小説でした。


『エイブ・リンカーン』吉野源三郎

世界で最も偉かったであろう人の一人、リンカーンの伝記。
いやー、思ってた以上に偉かった!
偉人って偉い!ということを再確認した良書。
また読みたい。一家に一冊!



『イニシエーション ラブ』 乾くるみ

最後の一行で驚愕、絶対にまた読みたくなる、といううたい文句。
へー。
何と言うか前半を読んでる間にトリックに予想がついてしまったので、
別に再読したくなりませんでした。


『悪魔が来りて笛を吹く』 横溝正史

同居人が八ツ墓村へ行くという用事に合わせるように横溝正史を読んでみた。
悪魔が来て笛を吹いてました、ヒュー。


『猫風船』  松山巌
松山巌の『日光』という小説が大好きなんだけど、
何と言うか、この短編集。やや消化不良な感じはあったけれど、
それなりにそれなりな短編集でした。


『最後の晩餐の作り方』  ジョン・ランチェスター

なぜ、皆、この本を読まないのか。
最強に美食に狂った男の、これでもかというほどのヨーロッパの料理解説が続く。
小説なのかエッセイなのか分からない不可思議な始まりから、ラストまで
とにかく美食に関する言及と家族の思い出が語られてゆく。
ぜひとも読んだ方がいい小説。そして、新潮文庫はこの小説を増刷しないので、
近々廃版になりそうな予感。


11月後半。
内田康夫×2冊。
西村京太郎×1冊。
アガサ・クリスティー×1冊。
山村美沙×1冊。

西村京太郎初体験は素晴らしい小説でしたよ、「寝台特急殺人事件」。

12月。
西村京太郎×7冊。
山村美沙×2冊。
赤川次郎×5冊。
泡坂妻夫、森村誠一、各1冊。

だから西村京太郎の哀愁ってなんだろう、ということが今年後半の発見です。
「終着駅殺人事件」、泣きそうになる。


『僕の東京地図』サトウハチロー

昔むかしの東京の、サトウハチロー的名店めぐり。
今は無き東京の姿がそこにあるようで、読んでいて、
行ったことも見たこともない場所が懐かしく思える。
ホントに素敵で偏見に満ちた東京エッセイ。


『日本人とユダヤ人』イザヤ・ベンダサン

日本人の著者が名前を変えて、ユダヤ人の体で書いた日本人論。
何というか、ユダヤ人の対立軸として日本人を置いたときに生じてしまう矛盾。
ユダヤ人は明確な立場がある。それに比べて、日本人の場合、
ヨーロッパ諸国の人種やアジア諸国の人種と日本人の差異と共通性を明確にしなければ、
比較対象として成り立たないと思うのだけれど、そこを無視して
論を展開していくので、何を言っても土台の無い空論な気がしてしまって、
何一つ胸に響かなかった。



『私の中の聖書』曽野綾子

大変良い本だとは思う反面、キリスト教徒でありながら、
ちょっとあくどい感じの本を出したり、仕事をしたりしてる著者自身が
なんとなーく、キリスト教精神と自分の行動の矛盾を
遠まわしに言い訳にした気もしないでもない。
でも、そういうことは関係なく、聖書のたくさんの部分から得た著者の想いというものは
共感できるし、1年の最後に読めて良かった。
by takekiygalmuto | 2010-12-30 08:12 | 日記