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作曲家/ピアニスト 武藤健城(イーガル)の公演情報などなど日々の白昼夢。


by takekiygalmuto

速水御舟その1

先日の新根津美術館に続いて、新しくなった山種美術館へ行って参りました。
以前あった仮の美術館は、やはり仮だけあってロビーのような場所に日本画を展示していたので、今回の本格的な山種美術館のオープン。さらには、速水御舟ということで、相当な混雑を予想していたけれど、そうでもなかった。
なぜなのだろう…。日本近代画の中でも、速水御舟は公開の機会が少ない画家として有名であるし、重要作品のほぼすべてが山種美術館に所蔵されている。
それが一挙に公開されるということは、なかなか無い機会だと思ったのだけれど、今では速水御舟はそんなに流行らないのか、ゆっくりと見れた。

速水御舟は、俵屋宗達の「源氏物語澪標関屋図屏風」に描かれた御舟から号を取ったということだけれど、(養子に入ったため)本名である速水から御舟という号を導いて、速い水の上に舟を御す(上手に操る)という意味を込めてあるのだろう。ただ、あんまりにも上手すぎる号の為に、少々ヤボな気もしないでもないけれど、それでもやはり名前からして流石と思わせる。
1894年生まれで、1935年に腸チフスで没するまで10代の頃から画壇で活発な活動をし、それは亡くなる直前まで続いていたので、画家としては相当恵まれた環境での創作活動が出来た。その当時でさえ、名声を博していた御舟だけれども、「炎舞」や「名樹散椿」が重要文化財に指定され、大正期から昭和初期の日本画壇を彩った画家として重要な画家であるのだと思うけれど、これまでほとんど見る機会が無かった。
何でまた、御舟の絵を見る機会があまりないのかと言えば、本々は、旧山種証券の山崎種ニと安宅栄一の安宅産業が御舟の重要な作品をほぼ持っていたためで、普通重要な美術品が美術館や国が持っているのを考えると、見る機会がとても少なくなってしまう。
さらに、1970年代の安宅産業の破たんを受けて、三井銀行が担保に持っていた安宅コレクションの速水御舟を山種が買い上げ、現在のコレクションが出来上がった。
…ということは、誰でも知っていることではあるのだけれど、これは、本当に、たまたま安宅産業が倒産し、三井が担保に御舟を持っていて、その話を山種に持っていって、一括で買い取ったのか、ということは疑問が残る。当然、安宅と山種は、御舟コレクションに関してライバル同士であることは間違いないし、何の作品を持っているのかも大体は知っていたはずである。米相場の山種が賭けに出ていないはずはないと思うのだけれど、どうだろう…。圧力をかけたわけでは無く、山種からの打診で三井銀行に、安宅に何かあった場合は御舟を担保に金を貸せ、という要請を出していたら…、まァ、相場師山種ならやりかねないなぁ、なんっていう気もしますが、勝手な想像です。
特に安宅コレクションに関しては御舟を抜きにしても素晴らしいものを取りそろえているし、一見の価値はある。それに比べて山種美術館が持っているものは、重要な日本画がいくつかあるもののほぼ松園、土牛、御舟が見ものといったところだろうか。
安宅と比べた場合には、山種の価値は、御舟コレクションに集約されていると思う。んー、そう思うと、御舟に魅せられた山種がけしかけた可能性もやっぱり捨てがたい…。

と、どうでもいい話になってしまいました。
絵の話には全く入らず…。


つづく。
by takekiygalmuto | 2009-10-21 21:59 | 日記