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作曲家/ピアニスト 武藤健城(イーガル)の公演情報などなど日々の白昼夢。


by takekiygalmuto

最近の読書

告知がすんなりできました。
ぜひとも来てくださいね、横浜に!


さて、年末年始ですが、何故か僕は、
涼宮ハルヒシリーズを読みまくり、
さらにスティーブン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した小説を読み漁り、
遅れてきた中二病みたいな、俺読書好きなんだって言ってるのにちょっと残念な人のレッテルが貼られそうな、
読書セレクションでお送りしていたのですが、食傷気味になってきて、もう少し違う種類の本を読もうと決めました。
もちろん、涼宮ハルヒシリーズは最高潮に面白く、
キングも「死のデッドウォーク」だとか、それはもうワンアイデアで最後まで押し切れる物語の構築力に感嘆極まれり、という感じだったのですが、
両方とも非現実的な世界を前提としたフィクショナルなフィクションで、
なぜだか突然、何だか普通の世界設定の小説が読みたい!という気持ちになりました。

ということで本を探しました。
家にある本で買ったのに読んでいなかったものの中に何かあるのではないか…と。

ええ、そんな儚い希望も潰えて、僕の本棚にはほとんどそういう普通の物語がなかったんですね。
これはもう普通の小説を調べてみよう、と思ったんですが、
「普通の小説」なんて調べてもそりゃもう検索できるわけもなく、
僕の知識を総動員した結果、Amazon先生に発注をかけました。
現代の日本の作家で、ちゃんと読んでいない人たちの純文学を何冊か。
そろそろ届くんじゃないかな。

届くまでどうしようか悩んだ末、とりあえず純文学ならばそれなりのアレですよねという期待を込めて、
ノーベル賞を取りましたカズオ・イシグロの「忘れられた巨人」を読みました。
僕は本当にもうカズオ・イシグロの「充たされざる者」が大好きで、ヌーヴォーロマンの文脈にのるような、そして、音楽を扱った小説では最高峰ではないかと勝手に思っているので、この一作だけでも価値のある作家なのですが、
「充たされざる者」を何度も読んで、その都度僕は充たされてしまいますごめんなさい。

「わたしを離さないで」もいいんですが、そこまで僕の好みではなかったので「忘れられた巨人」を買ったまま放置しておりました。あらすじも設定もしらないままとにかく読み始めました。

あらやだ素敵。
中世らしきイギリスが舞台。だけれども設定はファンタジック。
いきなりよくわからん穴ぼこに人々が暮らす村があり、そこにぼんやりした老夫婦がおります。
どうも、ぼんやりしながら、息子に会いに旅に出るらしい。でも息子がどこにいるのかは、なんとなくぼんやーりとしかわからない。でもとりあえず行ってみようかねえお嬢様(老夫婦の夫は妻をお嬢様と呼んでいるのです)、ってな感じでスタートします。

記憶やら過去やらが
非常に曖昧でぼやけた記憶となって、何かしら霧に包まれた感覚だけがある。そんなにも不確かな記憶と共に、
どこにいるのかも明確にはわからない息子に会いに行く旅。
それはもう、いきなりときめくにきまってます。

さらには遍歴の騎士が登場して、アーサー王に仕えていたらしい老騎士やら、陰のある少年が登場したり、
竜が出てきたり、
もうどんだけファンタジックなのよ!と思いながらどんどん読んでしまいました。

ええ、日常を舞台にした小説が読みたかったのに、全く違いましたね。
完全にファンタジックな物語でした。

だがしかし、そこはカズオ(敬称略
物語の主眼は旅でもなければ竜でもなく、それはもう記憶と過去。
忘れるということ。忘却とは一体何もので、忘れてはいけないことは本当に忘れてはいけないことなのか、
忘れることで突き進む何かがあるのではないか、というような大変複雑な問題を描いておりました。
それにも関わらず表面に現れるファンタジックな騎士道物語は停滞せずに、ちゃんと物語として進んでいく。
同時に呼応するように、物語の底辺にずっと流れ続ける忘却。
大変美しく、素晴らしい小説でした。

イーガルメーター
★★★★☆

星4つ。


ですが、僕が読みたかったのは日常生活的なやつ。
そろそろ届くかな、川上弘美の本。
ていうか、そろそろ届いても川上弘美そういえば別に日常の何となくの物語の人じゃなかった。
蛇踏んでたし、くまと散歩してたりしてたわ。どうしよう、まあいいか。

ここで僕は気づいたね。日常を追い求めてもダメなんじゃないかって。
そこで音楽小説を読もうと思いました。

去年恩田陸の「蜜蜂と遠雷」を読んで、クラシックのコンクールの様子、よく取材したんだなぁ、と感心しました。
そして、音楽小説というとよく出てくるのが中山七里の「さよならドビュッシー」
ミステリだったり、題名が何だかなぁ、と思ったりして読んでいなかったんですが、これまた持ってはいたので
読んでみました。

ひーーーー!

ナニコレ。

音楽描写が細かくて、何ていうんだろう、専門家じゃないとそこに目がいかないだろうというような描写がたくさんありました。「蜜蜂と遠雷」は取材で分かる範囲の知識というか、丹念に調べたんだろうな、というような破綻のなさでしたが、
「さよならドビュッシー」は、もっと音楽家の持つ感覚とか、ピアニストじゃないと気にかけないような些末な描写に満ちていて、大変面白かったです。
ちょっとコンクールで弾く曲がそれかよ、というような部分もありましたが、驚きました。
なんというんだろう、ピアニストの皮膚感覚を知っている人なのかしら。でもネットで調べたら作家本人は音楽はやっていないそうで、何でこんなこと書けるんだろうと不思議でなりません。
音楽の知識ではなく、感覚は人から聞いてわかるものじゃないような気がするし、人によっては同意できないようなことを恐れずに断言しているように思われました。
でもね、これミステリなんですよね。
もうさ、こんだけ書けるんだからミステリ要素いらなくね? みたいな気持ちになりながら読みました。
でも、ミステリとしても面白かったです。が、それ以上にピアノの演奏やコンクールを受ける気持ちの作り方とか、
そういう部分が大変好みでした。

ちなみに主役の子は、最初のほうで火事にあってそりゃもう黒焦げで皮膚移植して人造人間みたいになってます。
設定おかしいだろ。ところがどっこい、素敵な小説でした。

イーガルメーター
★★★☆☆

星3つ。




さて、郵便ポストを見たところ、届いておりました。僕の注文した小説。
川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」
長嶋有「三の隣は五号室」


いざ。
取り戻せ日常。



by takekiygalmuto | 2018-02-02 16:45 | 日記