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作曲家/ピアニスト 武藤健城(イーガル)の公演情報などなど日々の白昼夢。


by takekiygalmuto

岬の兄妹

最近、どんな映画を見ただろうか、と思ったら、

「サスペリア」のリメイクと去年の夏に見損なった「クワイエットプレイス」をやっとこさ見て、
あとは、3月1日公開の「岬の兄妹」をひと足お先に見させて頂きました。

「サスペリア」は丁寧な映画作りでとても良かった。
「クワイエットプレイス」も叫べないという抑圧された恐怖と映像の美しさ、そして何より音の使い方のうまさが素晴らしかったです。


でもな、何より、「岬の兄妹」ですよ。
僕は二ヶ月くらい前に見させてもらいましたが、これがもう、見終わってから何とも気持ちの置き場の困る代物で、
やるせないというか、ダメ人間映画というか、それなのにどこか心に引っかかる何か。
知的障害の妹を身体障害のある兄が売春させる、という話なんですが
これが行き場のない切なさに満ちていて、
その中で急に訪れるもどかしさの発散やら、青春の美しさみたいなシーンやら、
見どころしかない映画でした。

が。
全然ヒューマニズム映画ではないので、たくましく生きるだとか、貧困問題だとか、兄妹の美しさだとか、障害者版万引き家族だとか、そんな風に思って観てしまうと、カウンターパンチを喰らって、ノックアウト負けになるような映画ですので、ご注意ください。
もっとギリギリの映画です。やむにやまれずそんな環境に陥った貧しさを描いた映画ではないのです。
むしろ、そうやって生きるたくましさやズルさ、人間は美しく汚く弱くたくましい、というような
相反するたくさんの感情を相矛盾しながら抱え込んで、フラクタルに存在している、というような言葉では説明できない矛盾に満ちた人間の生き様をそのままむき出しに映像に映し出している、そんな映画です。

観てから結構時間が経ってますが、ふと、あぁ、あのシーン美しかったな、とか、なんか良かったな、とか
思い出す度に、どんどん美化されているので、
もう一度、映画館で観て、やっぱクソだな、と上映後に思いながら、それでも尚いい映画だなぁ、としばらくしたら思うんだと思います。


明日3月1日から公開されます。
ので、よかったら覚悟して、観てみてください。





by takekiygalmuto | 2019-02-28 13:28 | 日記