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作曲家/ピアニスト 武藤健城(イーガル)の公演情報などなど日々の白昼夢。


by takekiygalmuto

ピアノソロコンサート

友達の犬飼新之介君が
3月3日、ひな祭りだというのに
男気溢れるピアノソロコンサートを白寿ホールで行った。

プログラムは、
シューベルト 
ピアノソナタ 第13番 イ長調 D664

ベートーヴェン 
ピアノソナタ 第23番「熱情」 ヘ短調 op.57

バーバー
組曲『思い出』より
第4曲「トゥーステップ」
第5番「ためらいのタンゴ」

リスト
ピアノソナタ ロ短調 S.174

アンコール
ドビュッシー
月の光



シューベルトのソナタは、その曲が持っている小ソナタ的な雰囲気を凌駕した大きな演奏。本当に素敵だった。
新ちゃんは、もともとヴィルトゥオーゾ系のピアニストなので、こういう曲を弾いても、スケールの大きな表現になり、聴いていて心地が良い。僕は、このコンサートの曲の中で一番、良かった。
ベートーヴェンの「熱情」は有名な曲である。
そして、傑作と誉れ高いのだけれど、僕はあまり好きな曲ではない。ベートーヴェンのソナタはどれもそうだが、とにかく難しい。個人的には、ベートーヴェンが書き記したアーティキュレーションに常に忠実に弾くことがベストなのだろうと思うのだけれど、それを超えた素晴らしい表現も存在するだろうし・・・と考えていると切がない。
奏者としてやはり避けては通れないベートーヴェンの、特に「熱情」は難曲であると思う。
新ちゃんの演奏も、僕にはイマイチ曲の構成が明確に見えなかった点が惜しいと思ったけれど、音色やパッセージの美しさが際立ったすごくレベルの高い演奏だった。

バーバーは、気楽に聞ける小品で、すぐ終わっちゃったけど素敵だった。組曲全部やってもいいのに、と思った。 今度はバーバーのソナタが聞きたい。

そして、リスト。
このリストのソナタは、ロマン派のピアノソナタの中でも傑作中の傑作と言われる一方、超絶技巧の難曲、さらには単一楽章で書かれた、構成の複雑な曲。この曲をプログラムに入れる、ということは相当の自信の現われなのかなぁ、と思った。(絶対本人はそんなこと考えてなかったと思うけどw)
特に難しいのは、様々なセクションをどうつないでゆくか、30分を超える大曲を、セクションごとにパーツのように弾いてしまえば、全く統一感のない演奏になってしまう。そこを最初から最後まで長い一息で曲としてまとめる、ということは並々ならぬ難しさだと思う。
新ちゃんは出だしこそ、ややセクションごとに響く部分もあったが中盤以降は全く途切れることなく最後まで素晴らしい演奏をした。

彼の特色は、やはりヴィルトゥオーゾであるということだと思う。しかし、単なるヴィルトゥオーゾではなく、彼はかなり頭が良く、計算をして、曲を組み立ててゆく。しかし、それが頭で考えた演奏には全くならずに、しっかりと心に届く。
冷静でいて熱い。何て陳腐な褒め言葉なんでしょう。でも、そういうピアニスト。

こんな素敵なピアニストが同年代でいることが嬉しいし、
こんな素敵な友達がいるなんてー、誇らしいです、俺は。

つーか、俺、新ちゃんにソナタを書かなきゃいけなくて、何だか、遅々として筆が進まず、2年以上が経過。はやく書いて、弾いてもらいたくなった!
頑張ろう!


彼のコンサートはずっと観てきているけれど、今回のソロコンサートは、新ちゃんがプロのピアニストとして、本当に飛び出していくのだ、という気がする素晴らしいコンサートだった。


次回は、もっとプログラムの構成にコンセプトがある、統一感のある選曲で聴きたいな。
渋いプログラムで!

是非、みなさん新ちゃんを応援してあげてね。すごいピアニストになるよ、っていうか、すでにすごいピアニストだよ。

俺のブログから彼のブログもリンクしてありまーす。
by takekiygalmuto | 2007-03-05 19:03 | 日記